探偵コラム

詐欺事件

2024.9.1

探偵による詐欺被害の実態・悪徳探偵の見抜き方も解説

「探偵社に夫の浮気調査を依頼した後、キャンセルしようとしたら、高額なキャンセル料を請求された」
「探偵社に調査を依頼したけれど、報告書の提出がなく、本当に調査したのかわからないまま高額な支払いを求められた」
このような経験をされた方もいらっしゃるのではないでしょうか。

MJリサーチでも、他の探偵社に依頼して高額な違約金を請求されたなど、悪徳な探偵社を利用して被害に遭われた方からの相談を多数受けています。

今回は、弊社で相談を受けた悪徳な探偵社による被害の事例、悪徳な探偵社の特徴、悪徳な探偵社による詐欺の手口、悪徳な探偵社の見抜き方、被害を受けた場合の相談先などについて解説します。

弊社で相談を受けた悪徳な探偵社による被害の事例

まずは、弊社で相談を受けた悪徳な探偵社による被害の事例を紹介します。
相談者のAさんは、ネットで検索して見つけた探偵社に取引先に関する調査を依頼しましたが、調査中に担当していた調査員とは別の調査員と個別に連絡を取ったことを理由に違約金として150万円の支払いを求められたそうです。さらに、「警察に相談したら、別途違約金が発生する」と脅されたとのことでした。
Aさんは違約金を含めて総額600万円をこの探偵社に支払いましたが、調査の結果をまとめた調査報告書を受け取ることさえできませんでした。Aさんは刑事事件化することも視野に入れて警察に相談に行きましたが、証拠不十分という理由で被害届を受理してもらうことができませんでした。
罰金は現金で手渡しをするように求められたため、証拠は残っていません。また、契約書を交わしていなかったため、契約内容を証明する書類もありませんでした。

悪徳な探偵社の特徴

悪徳な探偵社を避けるためには、悪徳な探偵社に共通する特徴を知っておくことが大切です。悪徳な探偵社に共通する主な特徴について説明します。

探偵業の届出をしていない

悪徳な探偵社の特徴として最初に挙げられることは、探偵業の届出をしていないことです。
日本では、2007年6月20日に「探偵業の業務の適正化に関する法律」(探偵業法)が施行されました。この法律では、探偵業を営む場合、営業を開始しようとする日の前日までに、営業所の所在地を管轄する都道府県公安委員会に、所轄警察署長を経由し、営業の届出を行う必要がある旨が規定されています(同法第4条)。
探偵業法が施行された背景には、悪質な探偵業者と依頼者との間で契約内容を巡るトラブルが増加していたこと、違法な手段による調査を行う探偵が横行していたことなどがあります。このような悪徳な探偵による被害を未然に防ぐために、探偵業について必要な規制を定めた探偵業法が制定されたのです。
探偵業の届出を行っていない探偵事務所は、探偵業法に則った適正な業務を行っていない可能性が高いので注意が必要です。

契約書の締結をしない

調査を行う際に契約書の締結をしないことも悪徳な探偵社の特徴の一つです。
探偵業法では、依頼を受ける際は、契約の内容に関する重要事項を説明し、契約書を交わすことが義務付けられています(同法第8条)。そのため、探偵業の届出を行い、探偵業法に則って適正な業務を行っている探偵社では、調査を行う際に必ず契約書の締結を行います。
しかし、探偵業法を遵守しない悪質な探偵社の多くは、依頼時に契約書を交わしません。契約書がないと、契約の内容が書面に残されていないため、後から法外な料金を請求されるなどのトラブルが起きたときに、契約内容を証明する証拠がなく、不利な立場に陥る可能性があります。警察に相談しても、証拠不十分という理由で、被害届を受理してもらえない可能性が高いです。

調査報告書を提出しない

調査が終了した後、報告書を提出しないことも悪徳な探偵社の特徴の一つです。
優良な探偵社は、調査が終了した後、依頼者に調査報告書を提出します。調査報告書には、調査の記録が、調査中に撮影した写真とともに時系列で詳しくまとめられています。浮気調査の場合、対象者と不倫相手が待ち合わせ場所で会う様子、飲食店やホテルなどに二人で出入りする様子などの写真とともに、写真を撮影した時間と場所、そのときの二人の様子などが記載された調査報告書を受け取るケースが多いでしょう。このような調査報告書は、配偶者や不倫相手への慰謝料請求、配偶者への離婚請求などの法的措置を取る際にも、有効な証拠として役立ちます。
しかし、悪徳な探偵社に調査を依頼すると、このような調査報告書を受け取ることはできません。実際に調査を行っていないため、調査結果をまとめた調査報告書を作成することができないのだと考えられます。

違法な手段で調査を行う

違法な手段で調査を行うことも悪徳な探偵社の特徴の一つです。違法な手段とは、具体的には以下のようなものが挙げられます。

  • 本人に無断でGPS装置を仕掛ける
  • 他人の家の敷地内に無断で侵入する

上記のような行為は法律で禁止されている違法行為に該当します。
探偵業法では、他の法令において禁止や制限をされている行為や、個人の権利利益を侵害する行為は禁止されています(同法第6条)。しかし、探偵業法を遵守しない悪質な探偵社は、違法な手段で調査を行うことがあります。対象者に気づかれた場合、違法行為による調査を依頼したとして、依頼者が訴えられる可能性があるので注意が必要です。

「慰謝料を請求できます」などと断言する

浮気調査の相談をした際に、「慰謝料を請求できます」「調査の費用は慰謝料で払えますよ」などと断言して契約を促すことは、悪徳な探偵社が使う常套手段の一つです。
慰謝料請求などの法律相談を受けることができるのは弁護士の資格を持つ者のみです。弁護士の資格を持たない探偵が慰謝料請求などの相談を受けることは、非弁行為に該当します。

*非弁行為とは:弁護士法に定められている弁護士のみに認められている行為を弁護士以外の者が行うこと

悪徳な探偵社による詐欺等の被害の実態

悪徳な探偵社に依頼すると、以下のような被害に遭う可能性があります。

面談時に契約するまで帰してもらえない

悪徳な探偵社では、相談をするために事務所などを訪問した際に、契約するまで帰してもらえないことがあります。
3人のスタッフに囲まれ、契約書に早くサインをするように迫られて、監禁されているような恐怖を感じてサインをしてしまったという方もいらっしゃいます。

個人情報を漏らすなどと脅される

悪徳な探偵社では、浮気調査の途中で解約したいと伝えた際に「解約するなら旦那に調査をしたことをバラすぞ!」などと脅されることがあります。
探偵業法では、正当な理由なく業務上知り得た人の秘密の漏洩をすることを禁止されていますが(同法第10条)、探偵業法を遵守しない悪徳な探偵社では、脅すだけではなく、実際に個人情報を漏らすこともあります。

追加料金や違約金などを請求される

悪徳な探偵社に浮気調査などを依頼すると、高額な追加料金や違約金などを請求されることが多いです。
契約時は、20万円で調査できると説明されていたにもかかわらず、後から連絡があり、300万円~500万円という高額な追加料金を請求されたというケースもあります。また、解約を申し出たところ、100万円の違約金を支払うよう求められたという方もいらっしゃいます。

被害を受けた際の相談先

悪徳な探偵社に依頼してしまい、被害を受けた場合、どこに相談すればよいのでしょうか。考えられる相談先について説明します。

警察

悪徳な探偵社に高額な費用を脅し取られるなどの被害を受けた場合、警察に相談して、被害届を出したいと考える方は多いでしょう。
しかし、警察に相談しても、客観的な証拠がないと、被害届を受理してもらえない可能性が高いです。実際、この記事の冒頭で紹介した事例でも、証拠不十分という理由で、警察に被害届を受理してもらうことができませんでした。

消費生活センター

探偵社との契約に関するトラブルについて相談したい場合は、消費生活センターに相談してもよいでしょう。
消費生活センターは、消費生活に関するトラブルを相談できる公的機関です。専任の消費生活相談員に電話で相談して、トラブルの解決に向けた具体的な方法について、アドバイスを受けることが可能です。相談は無料ですが、電話の通話料金はかかります。

弁護士

探偵社から違約金などの名目で金銭を騙し取られた場合や、脅されて法外な金額を支払ってしまった場合は、返金を求めるために弁護士に相談して法的措置について検討したいという方もいらっしゃるでしょう。
弁護士に相談する場合は、被害に遭ったことを示す客観的な証拠が必要となります。証拠を持たずに相談しても、法的措置をとることは難しいと言われる可能性が高いです。

探偵事務所

警察や弁護士に相談したけれど、「証拠がないと対応できない」と言われてしまったという方もいらっしゃるでしょう。その場合、まずは証拠を確保する必要があります。ただし、悪徳な探偵は、証拠を残さないよう、契約書を交付しない、金銭を受け取る際は記録が残らないように現金の手渡しで受け取るなどの対策をしています。そのため、証拠を探すことは難しい場合もあると思います。
そのような場合、探偵事務所に相談して、証拠を確保するという方法があります。探偵事務所に相談すれば、個別のケースに応じて証拠を確保する方法をアドバイスしてもらうことが可能です。
例えば、被害を受けた探偵に連絡をし、会話を録音して証拠とするなどの方法が考えられます。また、依頼をした探偵社が反社会勢力と関係のある団体ではないか、実態のない組織ではないか、担当者が偽名を使っていないかなど、詳しく調べることも可能です。

悪徳な探偵を避ける方法

悪徳な探偵社と関わると、高額な支払いを求められたり、脅しを受けたりなど、想定外の被害に遭う可能性があるので、そのような探偵社を見抜いて避けることは非常に重要です。
悪徳な探偵社から脅しを受けるなどの被害を受けて、その被害に関する証拠を確保するために、別の悪徳な探偵社に依頼をして、さらなる被害を受けたという方もいらっしゃいます。
そのような事態を避けるためにも、悪徳な探偵を避ける具体的な方法について理解しておきましょう。

探偵業の届出を確認

まずは、探偵業の届出をしているか確認することが大切です。
探偵業法では、届出書を提出した公安委員会や、届出書の受理番号などを記載した標識を公式サイトに記載することが義務付けられています。探偵業の届出をしている探偵社の公式サイトには、「〇〇〇公安委員会 第〇〇〇〇〇〇号」などと明記されているはずなので確認しましょう。

契約前に重要事項説明書を確認

悪徳な探偵を避けるためには、正式に依頼する前に、重要事項説明書という書類を確認することも大切です。
探偵業法では、契約前に重要事項説明書という書面を交付することが義務付けられています(同法8条1項)。重要事項説明書には、提供される探偵業務の内容、支払う金銭の概算額と支払い時期、契約の解除に関する事項など、契約に際して重要な事項が記載されているので、しっかり確認し、不明な点については積極的に質問しましょう。
質問に対してわかりやすい回答が得られない場合は、信頼できない探偵社だと判断して、契約を見送ってください。

調査報告書のサンプルを見せてもらう

依頼をする前に、調査報告書のサンプルを見せてもらうことも大切なポイントです。
悪徳な探偵社の中には、調査を行ったふりをして、実際は調査を行わない業者もあり、そのような業者は調査報告書のサンプルを提示できないはずです。また、調査報告書のサンプルを提示されたとしても、写真に写っている人物の顔が不明瞭、文章がほとんど記載されていないなど、客観的な証拠として認められないレベルのものである可能性もあるので、内容についても確認してください。

まとめ

今回は、悪徳な探偵社の特徴、悪徳な探偵社による詐欺の手口、弊社で相談を受けた悪徳な探偵社による被害の事例、悪徳な探偵社の見抜き方、被害を受けた場合の相談先などについて解説しました。

探偵業法の施行により、反社会的勢力との関わりがある悪徳な探偵社の多くは淘汰されましたが、現在も悪徳な探偵は存在します。被害に遭わないためにも、悪徳な探偵社を見極めて回避することが大切です。


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この記事を書いた人
探偵 若梅

探偵調査員歴22年/常人逮捕協力5回、刑事事件協力30回以上、テレビ出演15回、メディア取材多数/大手探偵社から独立し20年以上の経験を持つベテラン達を集め大手探偵社から独立。


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